KOMSOMOLETS







 GOMZ(LOMOの前身)の二眼レフカメラ「コンソモレッツ」は「ルビテル」の前身であり、1946年〜1950年に製造された。名前はコンソモールに由来している。

 私は、二眼レフはあまり好きではないので、これまでまったく感心が無かったのであるが、中村陸雄氏の「ソビエトカメラ党宣言」に、名前がスゴイとの記述があったので、ちょっと入手してみる気になった次第である。コンソモールとは日本では「共産主義青年同盟」と言っていた。ソ連にはボーイスカウトみたいな少年用組織にピオネールと言うのが合ったが、この青年版がコンソモールである。14歳から28歳までの青年が加入する。なお、ピオネールは10歳から15歳である。ソ連時代、ピオネールに入っている少年や、コンソモールに入っている青年は、非常に多かったので、コンソモールと言う言葉自体、ありふれたものだった。だから、カメラのネーミングに使われても、当たり前のことである。



左のものはコンソモールのバッジ、中央と右のものはピオネールバッジ
多くの青少年が加入していたため、これらのバッジは、ありふれている。



 そういえば、かつて日本の学生運動なども、なかなかスゴイ名前を付けていた。「革マル」は確か、「革命的マルクス主義者」だったし、「社会主義青年同盟」なんていうのもあったし。「中核」は何の略だったのだろう。かつての学生運動は、それなりに哲学や社会学を勉強していましたよね。マルクスやレーニンだけではなく、ヘーゲルや場合によってはカントなども結構読まれていました。左翼になるには勉強しないとダメで、勉強する気の無い奴は右翼になって、「天皇陛下万歳」とだけ叫んでいたっけ。当時の右翼に神武天皇以降、今上天皇までの名前を言えるものなど皆無だった。今、左翼はなくなってしまったけれど、右翼は如何なのだろう。右翼のうるさい外宣を聞く限り、勉強の出来そうな奴などいないな、きっと。もし、ここを読んでいる右翼の人がいたら、忠告します。右翼だったら、天皇の名前ぐらい覚えておきなさい。ここを読んでいる右翼などいるわけ無いか。
 ソビエト崩壊以降、マルクス・レーニンを読む人はめっきり減ってしまい、レーニン全集なども、なくなってしまったようである。それはある程度仕方のないこととしても、哲学が一般に敬遠されてしまっているのはなぜだろう。事実の因果関係は逆で、哲学の敬遠がソビエト崩壊に繋がったのだろうか。青年から哲学が無くなったら、右翼のように、思想を離れて単純な暴力犯罪に向かうか、それとも、たんなる金儲けのみを賞賛する態度に向かうか、はたまた、宗教に傾倒して、イスラム原理主義のような犯罪者の手先になるか。そのぐらいしか無いもんね。多くの人は、たんに金儲けのみを賞賛する態度に向かうのでしょうけれど。
 最近は少し嫌がられるようにもなっているけれど、ここ数年ほど、ビジネスモデルなる言葉がもてはやされたことがある。ソフトバンクの孫正義氏が賞賛の対象になっていたっけ。私には関係の無いことだと思っていたら、YahooBBのいいかげんさには、ひどい目に合わされてしまった。青年の中に哲学が嫌われ、青年の関心がもっぱら金儲けに向かった時、そしてビジネスモデルなるものがもてはやされるようになった時、必然的に、孫正義氏が現れる。

 ところで、ピオネールやコンソモールと言う言葉を思い出したら、ショスタコ-ビッチの森の歌を、急に聴きたくなった。この曲の4楽章の副題が「ピオネールは木を植える」、5楽章の副題が「コンソモールは前進する」である。手もとには、ムラビンスキー版、スベトラーノフ版、ウラノフ版のCDがある。以前はマキシム・ショスタコ-ビッチ版のLPを持っていたのだが、LPプレイヤーを持っていないので、聞くことが出来ない。
 ソ連崩壊後、この歌も流行らなくなって、CDを見つけるのも難しいかもしれない。そこで、副題が「コンソモールは前進する」となっている、5楽章の歌詞の日本語訳を掲載します。なお、この歌は1948年ごろ行われた、スターリンの指導による、大規模植林事業を讃える歌です。

 今では、もうだいぶ昔のことになってしまうが、1979年ごろ、スベトラーノフ氏とソビエト国立交響楽団の来日演奏会が、東京渋谷のNHKホールであったのを聞いたことがある。このときの最終演目が、ショスタコ−ビッチの「森の歌」で、アカデミーロシア共和国合唱団との競演だった。パワーみなぎる熱演に、私を含む多くの聴衆は感激し、演奏が終わると、スターリンの事業をたたえるこの歌の演奏に対して、長い拍手がなりやまなかった。
 長い拍手が続くのに、スベトラーノフ氏は姿を見せず、それでも鳴り止まない拍手が、20分ぐらい続いて、そのうち、オーケストラメンバーも引っ込んでしまった。すると拍手は、手拍子に変わり、それも10分ぐらい続いた。その後、ようやく、スベトラーノフ氏が姿を現し、聴衆に一礼すると、広いNHKホールは割れんばかりの拍手になったのである。いままで、これほど長く続いた拍手を見たことが無い。


ショスタコ−ビッチ 森の歌 第5曲

(混声合唱)
偉業を成し遂げよう、
偉大なるソヴィエトの国の人々よ!
いままでは自然の恵みにまかせてきたが
これからは自分たちの手で幸福をつかむのだ
国土に菜園をひろげよう

(女声合唱)
われらは平凡なソヴィエトの民
コミュニズムはわれらの誉れ、われらの栄光
人々が「コミュニズムの世界が到来する]と言ったなら
彼らには「否、すでに到来せり!」と答えよう

(混声合唱)
旗を高く掲げよう!もっと高く掲げよう!
コムソモールらの軍隊は出現した
木々の緑を燃え上がらせるために
ヴォルガ川のほとりで
ああ!

(男声合唱)
コムソモールの森林地帯は
われらの小麦を守る壁となる
カムイシンからヴォルゴグラードまで
南はチェルケッスクの森まで

(混声合唱〕
旗を高く掲げよう!もっと高く掲げよう!
コムソモールの軍隊は出現した
木々の緑を燃え上がらせるために
ヴォルガ川のほとりで

(女声合唱)
あたかも我らの平和軍のように
もしすべての木々が整列したら
木々は地球をぐるりと取り巻き
清らかな湿気で地球を灌慨するだろう

(混声合唱)
旗を高く掲げよう!もっと高く掲げよう!
コムソモールの軍隊は出現した
木々の緑を燃え上がらせるために
ヴォルガ川のほとりで

(男声合唱)
ヘイ、この素敵な庭に踏み込むな
この庭に比べれば、君たちはまるで小人のよう
ここの白樺の幹は君たちのよりも太く
まるで大砲のよう

(混声合唱)
兵士の町、われらが英雄の町は
大地の誇り、大地の栄光
不屈の町よ いく久しく賛辞を受けよ、
豊かなるヴォルゴグラードよ!
旗を高く掲げよう!もっと高く掲げよう!
旗竿に翻る緑の木の葉は勲章のよう!
水を運べ、そして共に喜べ
無限なるヴォルガよ


 カメラとは関係のないことを、うだうだと書いてしまった。そろそろ、カメラの説明をします。
 はじめにも書いたとおり、1946年〜1950年にLOMOの前身であるGOMZにより製造された。製造地はレニングラードである。製造台数は、Princelle本によると、25,000台程度である。この後に続く、LubitelやLubitel2などが100万台のオーダーで製造されているのに比べると、かなり少ない。さらに、時代が古いこともあり、Lubitelシリーズに比べ、見かけることの少ないカメラである。
 カメラの材質には、プラスチックが多用されている。プラスチックと言っても、この当時のことであるから、ベークライトだと思う。プラスチックに詳しい人だと、見ただけでなんと言う樹脂かが分るそうであるが、私にはどれも同じように見えてしまい、樹脂名は見分けがつかないので、ひょっとすると間違いかもしれない。
 カメラの構造はいたって簡単である。距離計は無い。ファインダー用レンズは、固定されている。ファインダーのぞき窓には、拡大鏡など無い。ファインダー用レンズが撮影レンズと連動するようになったのは、Lubitelからである。
 付属レンズは、T-22 7.5cm 1:6.3と書いてある。実際は、トリプレット、焦点距離7.5cm、開放F値4.5。ファインダー用レンズは1枚玉で、撮影レンズよりもむしろ明るい。ファインダーレンズは、ねじ込み式になっており、簡単にはずすことが出来る。もっとも、はずす理由は無いけれど。
 絞り値8と11の間に赤点がある。また、距離7mぐらいのところに赤点がある。この赤点を使うとパンフォーカスになるようである。


ルビテルと異なり、撮影レンズと、ファインダーレンズは連動しない。ルビテルはリコーフレックスと同じように、ギヤで連動します。コンソモレッツには距離計は無い。

レンズを横から見たところ。横に、絞りや、ピントを合わせるポイントがあります。(単にずれているだけかもしれない。)

横についているのは、フィルター入れでしょうか。

裏蓋を開けたところ。カメラ内部は単純な構造です。



説明
 フィルムサイズ:6×6版(6×4.5はない)
 レンズ:T−22 75mmF6.3 前玉回転式
 シャッター:B,1/10,1/20,1/50,1/100,1/200 
        セットレバー式   
 絞り:F4.5,F5.6,F8.0,F11,F16,F22
 絞り羽根数:8枚
 セルフタイマーなし、シンクロ接点なし。
 ファインダー:二眼レフ(距離計は無い)
 露出制御:手動設定
 最短撮影距離:1.2m
 フィルター枠:かぶせ式
 裏蓋:蝶番式
 フィルムコマ送り:赤窓による番号確認方式
 サイズ:H126×W87×D86mm(高さは、ファインダーを畳んだ時のサイズ)
 質量:550g 
 製造番号の頭2文字:50
 製造年:1950年


撮影例1 なんかぼやけた写真しか撮れません。

撮影例2 ネガから直接スキャナーで取り込んだら、結構シャープになった。


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