KMZ製レンジファインダーカメラZorki-1

 KMZでレンジファインダーカメラ製造がはじまったのは1948年のことである。最初は、FEDの技術者の協力により製造したため、Fed-Zorkiと名づけられた。
 1949年からは、単にZorkiとなっている。Zorkiはその後1956年まで製造されている。製造年代により、若干の違いが見られ、Type-aからType-eに分類する。また、Zorkiの文字は通常キリル文字のみであるが、キリル・ラテン文字併記のものもあり、これらは通常、輸出バージョンと呼ぶ。
 
 なお、 「ЗОРКИЙ」とは「目敏い、洞察力のある、注意深い」と言う意味である。1948年、FED-ZORKIを製造したKMZは、その後1978年(一部80年)に、Zerki-4Kの製造終了まで、レンジファインダーカメラを製造している。



 Princelle本によれば、Zorki-1はType-aからType-eに分けられる。しかし、タイプによる違いは少なく、見分けは難しい。また、異なるタイプのZorki-1の部品を流用して修理した個体もある。一応、分類するとこんな感じになる。特徴はPrincelle本には色々書いてあるが、現物を比較しないと、よく分らない。製造年はPrincelle本によるが、実際とは違うと思う。

Type 製造年
たぶん間違っている
特徴(これ以外にも特徴がある。)
a 1949-50 シャッターボタンにケーブルレリーズを取り付けることが出来ない
b 1950-51 ケーブルレリーズを取り付けることが出来るようになった。
アクセサリーシューの形はType-aと同じ。
c 1951-53 アクセサリーシューは矢印のみ。
d 1953-54 Type-cとの区別が私にはよく分らない。
(天板は彫り込みでは無く、刻印になった。)
e 1954-56 Type-d同様、天板は刻印
マウントの周りは金属であり、革ではない。

 ところで、Princelle本によれば、Type-aの製造数は2000台程度であり、FED-ZORKIの5500台に比べかなり少ない。タイプ別に販売していることが少ないこともあり、Type-aを見つけるのは非常に困難である。しかし、Type-aがいくら少ないと言っても、FED-ZORKIに比べかなり安価で、他のタイプのZorkiとさほど違いの無い価格で販売されていると思う。
 最近、FED-ZORKIはかなり高額で販売されている。しかし、FED-ZORKIは戦後のFEDと天板の彫り込み以外違わないので、偽物造りが容易である。このような理由で、最近、FED-ZORKIの偽物が出回っている。Zorki Type-aは高価ではないので、偽物は出回っていないようであるが、もし、多くの人がこのようなサブナンバーに興味を見持つようになり、高価で取引されるようになったならば、すぐに、偽物が作られてしまうだろう。
 カメラは所詮工業製品であり、美術骨董品とは違うものである。FED-ZORKIのように、単に、少しばかり珍しいと言うだけで、高価に取引されるのは健全な状態ではない。



1950年製 Zorki-1 TypeB

Zorki-1の初期のものは、製造番号が天板に彫られていた。
製造番号が天板に彫られているものは、裏面に彫られているものに比べ少ない。
アクセサリーシューに矢印以外に、段差の模様があるのは、Type-a,Type-b。

キリル文字、ラテン文字併記のものもある。
併記タイプは比較的初期のものが多く、このため製造番号は天板に彫られていることが多い。
アクセサリーシューの模様が矢印のみなのは、Type-c以降。









ファインダー用アームの形状:
 上左図は初期のアーム形状で、戦前のFEDと同じ。右は後期のアーム形状で、以降のZorkiはすべてこの形である。
 



説明
  マウント:M39(ライカLマウント)
  シャッター:横走布幕、セルフタイマー付
  シャッター速度:B,1/20,1/30,1/40,1/60,1/100,1/200,1/500(Type a〜d)
            B,1/25,1/50,1/100,1/250,1/500(Type e)
  ファインダー:2眼式2重像合致距離計連動、
  露出計:なし
  フィルム装填:底蓋着脱式
  フィルムカウンター:順算式
  三脚ねじ:3/8インチ
  製造:KMZ(クラスノゴルスク機械工場)




  Zorki-1 Type-Dのパスポートの表紙


元箱


Zorkiの底板

初期のZorkiの製造番号は天板にあり、背面には何も無い。


Zorki Type D

多くのZorkiの天板には、キリル文字のZorkiの表示と、KMZマークが書いてある。
彫り込みではなく、刻印である。


 製造番号は背面


背面、製造番号部分の拡大。1944年製造と言う分けではない。
製造番号の頭2桁が製造年を表すのはもっと年代が下ってからである。


Zorki Type E




Type-eはZorkiの最後のタイプである。マウント部分の周りに革が無いのが特徴。
あとは、Type-dと変わらないと思う。
なお、このボディーの製造番号の頭2桁は55であり、1955年製造と思われる。


 Zorkiのケースは、最初のころは1ホックのタイプであったが、2ホックタイプになっていった。ストラップの付け方も異なる。
 図の2つのケースのうち、2ホックタイプのものは、沈胴しないIndustar-22用のケースで、レンズ部分が少し出っ張っている。


Zorki-1の分解と調整

レンジファインダーの調整方法など


 以下の写真はZorki-1 Type−B(1950年製)で撮影したものです。レンズは、ZORKIと表示のあるIndustar-22(1950年製)を使用しています。
 現在のレンズからすると多少甘い感じがしますが、十分に実用に耐えるものです。

撮影例1 群馬の田舎で
撮影例2 同じく群馬の田舎で
撮影例3 小学校の運動会
撮影例4 運動会を見る変な人


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