レンジファインダーカメラFED-S


 戦前に作られたFEDの特別バージョンです。戦前FEDのシャッターは、高速側最高速度1/500ですが、これを1/1000にしたのが、FED-Sです。このカメラに付属しているレンズは、開放F値が2.0になっています。(普通のFEDは3.5。)F値を明るくしたために、シャッター速度の高速側を伸ばしたものと思われます。ただし、無理をして作ったためか、正しく1/1000が出ているか、どうかは、かなり怪しいところです。
 ところで、FED-Sの製造年代は、1938年から1941年です。スターリンの粛清が本格化したのが1936,7年ですので、粛清の嵐が吹き荒れている時代の製造ということになります。実際に付属レンズで撮影すると、絞り開放では、ボケボケ写真で、とても満足できるものではありません。通常の撮影では、F2やF2.8は使えず、FED-Sの意味が感じられません。室内で、フラッシュランプ無しに、ともかく撮るために作られたのでしょうか。
 FED-Sの製造台数は、2000台程度と言われています。きわめて、特殊用途に使われたものと思われます。
 FED-Sの製造は1941年で終了しますが、これは、同年、ナチスの侵略により、製造ができなくなったためです。FED-Sを製造した、ハリコフは1941年10月23日に陥落しています。
 なお、低速側を伸ばしたFED-Vの存在が知られていますが、こちらは、製造数が極めて少なく、お目にかかることはないと思います。







シャッターダイヤル。1/1000が追加されている。




説明
  マウント:M39(ライカLマウント)ただし、フランジバックは、若干短い。
  シャッター:横走布幕
  シャッター速度:Z,,1/20,1/30,1/40,1/60,1/100,1/200,1/500,1/1000
  ファインダー:2眼式2重像合致距離計連動
  フィルム装填:底蓋着脱式
  フィルムカウンター:順算式
  付属レンズ:FED(50mm F2.0) 
  製造年:この固体は、1938年と思われる。


付属品
  専用のケース付き。
  古いものなので詳細は不明。


撮影例1(絞りを換えて撮ってみました)


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