Zorki11とリコーオート35V 比較
Zorki-10:1965年ライプツィヒ世界博覧会カメラ部門にて金賞受賞
リコー・オート35Vは製造コスト削減を追及したカメラに見えます
株式会社リコーのインターネットページには、Zorki_10,11はリコー・オート35Vのデッドコピーであると書かれていた。1994年に、事実か否かを尋ねたところ、『不適切な表現である』との理由で、削除された。
巷間には、いまだに、Zorkiはリコーのコピーであると言う人もいるようである。
ここでは、両者を比較する。
仕様
Zorki_11 | リコーオート35V | |
露光 | セレンメーター針押さえ式AE | セレンメーター針押さえ式AE |
レンズ | 45mmF2.8 | 40mmF2.8 |
フォーカス | 距離目盛による手動設定 | ゾーンフォーカス |
絞り羽根 | 5枚 | 4枚 |
シャッター羽根 | 4枚 | 2枚 |
質量 | 650グラム | 500グラム |
リコーは40mmF2.8でゾーンフォーカスですが、これでは、ピンボケの可能性が高いはずです。Zorki_11は距離目盛が付いているので、カメラ操作に慣れている人には、正確にピンとあわせが出ます。Zorki_10は距離計つきモデルで、初心者でも使いやすくなっています。
外観比較
2つにカメラを上から見ると、一見したところそっくりです。でも、Zorkiはボディ全面が銀色なのに対して、リコーは下半分が黒になっています。
それから、写真でも銀色部分の質感の違いがわかると思いますが、Zorkiは真鍮にクロムメッキなのにたいして、リコーはアルミニウムを使っています。材質の違いは、現物を見ただけでも容易にわかりますが、持ってみるといっそうはっきりし、Zorkiはリコーに比べてずっしりと重く感じます。(写真 左:Zorki-11 右:リコーオート35V)
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下から見ると。
下には、巻き上げノブと巻き戻しノブ(ダイヤル)があります。似ているけれど、ちょっと違う。巻き上げノブはだいぶ形が違います。巻き戻しは、Zorkiはダイヤルなのに対して、リコーはノブ。また、フイルムカウンターの位置や、フイルムリリースボタンの位置が違うので、内部のメカニズムが異なることを示唆しています。(写真 左:Zorki-11 右:リコーオート35V)
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机に置いてみると、両者の違いは明白です。
後ろから見たとき、一見するとそっくりに見えるけれど、Zorkiはカメラ底部のフイルム巻き上げ・巻き戻し機構がボディーに収まるように作られているのに対して、リコーでは、ボディーに単に付けただけであるため、テーブルに置いたときのすわりが悪いカメラです。(写真 左:Zorki-11 右:リコーオート35V)
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内部(底部)の比較
底板をはずして、内部を見ます。
(写真 下:Zorki-11 上:リコーオート35V)
一見しただけで、違いがあることは明白です。
リコーでは、巻き上げノブを戻すのに、直線バネを使っています。この方式は、製造時に熟練を必要とせず、安価な労働力で済ませることが可能なのかも知れませんが、巻上げ時のトルクに違いが大きくなって、若干使いにくく感じることがあります。
リコーでは廉価カメラを目指しているようです。
ファインダー部分の比較
Zorkiのファインダーは対物レンズ2枚レンズなのに対して、リコーは1枚です。このため、リコーのファインダーは、樽型のゆがみが大きく、見ていて疲れます。安く作りたかったのだろうけれど、見難いファインダーです。
また、Zorkiは内部にプリズムブロックを使用しているのに対して、リコーではミラーです。リコーの方が、廉価に製造できるけれど、腐食の可能性が高くなります。
総じていえば、Zorkiはまじめに作られているけれど、リコーは徹底して廉価カメラを目指しています。(写真 左:Zorki-11 右:リコーオート35V)
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リコーのファインダーユニット
リコーのファインダーはユニット化されていて、簡単にはずすことができます。Zorkiはユニット化されているのかどうか、よくわからない。
リコーのファインダー窓の覆いのカバー
ブライトフレーム用にその部分だけ曇りガラスになっていることが多いのだけれど、リコーでは、単に紙を当てているだけです。紙がずれて、ファインダーが見えなくなることがあります。徹底して廉価カメラを目指しているようです。
Zorkiのファインダー窓の覆いのカバーは、半分が透明、半分が曇りガラスを使っているので、リコーのようなトラブルは起こりません。
露出計
ファインダーの下に自動露出のための露出計があります。この時代のカメラには、一般に見られるメカニズムです。
Zorkiに比べて、リコーは露出計の段数はずいぶん少なくなっています。日本のほかのカメラも、たいていは、Zorkiのように細かい鋸歯のようになっていることが多いので、リコーの段の少なさにはちょっと奇異な感じがします。こんなに少なくても正しい露光ができるのかなー。(写真 左:Zorki-11 右:リコーオート35V)
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驚きのセレン露光計
リコーのカメラは、いろいろと廉価化をねらって、カメラの性能を犠牲にしているように感じます。
驚いたのは、レンズの周りにある、セレン露光計。
レンズ周りをはずすと、簡単にセレンが外れます。普通は、セレンとリード線でつながれていて、半田付けされているのだけれど、それが無い。単に、金属を接触させるだけの、電気接点になっています。半田付けの手間を省いたために、電気接点の腐食が発生しやすくなっています。写真は、リコーのカメラのセレンをはずしたところ。
Zorkiではどうなっているのか見たいのですが、セレンのはずし方がわからない。(おそらく、レンズをはずさないと、セレンをはずすことができないようです。)他の類推では、普通に半田付けされていると思います。
Zorkiのフィルム巻き戻しダイヤル
写真は、Zorkiのフィルム巻き戻しダイヤル(ダイヤルをはずしたところ。)
ダイヤルがボディーに埋まっていると、巻き戻しにくいので、ポップアップするようになっています。このメカニズムを実現するためには、軸に中にばねを入れて、スリーブをかぶせ、小さいネジでとめる必要があります。写真は、ネジ部分を写しています。
カメラで、このようなメカニズムは当然なのですが、リコーでは、単にノブを止めているだけです。このため、Zorkiでは使わないときはボディに埋まった形になっているのに、リコーでは常時ボディーから飛び出した形になっています。